明楽みゆき 音楽の森

音楽と歴史

バロック音楽以前 チェンバロの時代のお話

■チェンバロのルーツ

当時の鍵盤楽器の総称「ヴァージナル」
(横田誠三氏製作)

イタリア式ヴァージナル。東方起源の撥弦楽器「プサルテリウム」に鍵盤装置を組み込んだ様な形状。「久保田彰チェンバロ工房」作

バッハの好んだ「クラヴィコード」。チェンバロと違い弦を突いて音を出す。(ライプチヒ大学音楽博物館所蔵)

■チェンバロの成り立ちと装飾

チェンバロは15世紀から18世紀のヨーロッパ音楽において活躍した鍵盤楽器で、弦をはじいて音を出す方式の「撥弦楽器(はつげんがっき)」です。 チェンバロの正確な起源は明らかではありませんが、9世紀頃に東方からヨーロッパへもたらされた古楽器「プサルテリウム(プサルテリー)」に、当時オルガンの機構として普及しはじめた鍵盤を取付けたものが、後にチェンバロとなりました。

チェンバロは18世紀に登場したピアノの発展とともに一時衰退しましたが、20世紀以降古楽器として復活し、今日では主にバロック音楽を演奏する際に活躍し、さらに現代作曲家によるチェンバロ作品も増えてきました。

現在日本では、音色の再現につとめ当時の制作方法に忠実なまさに「ヒストリカル・チェンバロ」として、楽器職人により制作されております。

明楽みゆき使用のチェンバロは、フランドル様式(フレミッシュ)と呼ばれるもの。「久保田彰チェンバロ工房」作

屋根(蓋)を開けて演奏します。屋根裏には繊細な装飾でラテン語のメッセージが記されています。

チェンバロは2段鍵盤です。
音に強弱と、音色の変化を楽しむ為です。

チェンバロのボディには随所に美しい装飾が手作業で施されています。ローズやロゼッタと呼ばれる響孔には真鍮のレリーフが施されています。

チェンバロ奏者としての明楽みゆきが使用するこの楽器は、「久保田彰チェンバロ工房」に製作して頂いたフランドル様式(フレミッシュ)と呼ばれるものです。

随所に精細な装飾が施されたもので、すべての部品が手作業で組み上げられている、まさに工芸品と言える楽器です。

またコンサートの際、輸送するときに自分自身で解体と組み立てを行うことができる点も、ピアノと大きく違うところです。

■チェンバロの音が出る仕組み

チェンバロは鍵盤楽器で、蓋(屋根)を開くと弦が張ってあるところまではピアノとよく似ています。
ですが、チェンバロは「撥弦楽器(はつげんがっき)」ですので、弦をはじいて音を出します。

鍵盤チェンバロの響板の上、減とジャックが並んでいる画像です。

取り外したジャック。小指ほどの大きさで、ひとつひとつが6個の部品で組み立てられています。

鍵盤と連動したツメが弦をはじくことで音を出しますが、この鍵盤と連動する機構のうち、ツメが取付けられた部分は一つひとつ簡単に取り外すことができます。この部分を「ジャック」と呼びます。

ジャックはおよそ6個の部品で構成されており、割り箸より薄く小指ほどの長さの板のなかに「弦をはじく(音を出す)」⇒「ツメが弦をよける」⇒「弦の振動を止める(音を止める)」という動作をするよう、精細な機構を備えています。

ジャックの先端には、弦を引っ掻いて音を出すツメ(プレクトラム)と、音を止めるフェルトが備わっています。

チェンバロの機構や部品は繊細で、ジャックは演奏で壊れてしまうこともあります。そのため、チェンバロの構造はあらかじめメンテナンス性が高く作られています。

そのほか、ピアノに比べてチューニングも必要なので、基本的には演奏者が調律するなど、同じく撥弦楽器であるギターなどと類似している点も多いです。 また調律の面白さもチェンバロならでは…です。

古典派音楽以降 ピアノの時代のお話

■ピアノの成り立ちと構造

ピアノは17~18世紀頃にヨーロッパ音楽において登場し、今日まで用いられてきた鍵盤楽器です。
音域の広さと汎用性の高さから、様々な演奏目的に使われるのは勿論、音楽教育や作曲などにも広く用いられています。

現存する最古のピアノは1720年代に製作されたものですが、その時点で既にチェンバロやクラヴィコードなどの既存の鍵盤楽器の技術の上に成り立った発明品でした。

1790年から1860年頃にかけての時期に、ピアノはモーツァルトの時代の楽器から、いわゆるモダンピアノに至る劇的な変化を遂げます。

産業革命に裏付けられた鋳造技術の進歩により、精度の高い鉄製フレーム製造が実現したことで、音域が広がり品質も安定しました。

現在生産されている一般的なピアノ(モダンピアノ)は、工業製品として製造行程が確立されています。
その点が、現代でも楽器職人による手作りの工芸品と言えるチェンバロ(ヒストリックチェンバロ)と比べて大きく違います。

イタリア-フィレンツェの富豪メディチ家のお抱え楽師、クリストフォリが発明した最初のピアノ。(久保田彰氏復元製作)

シューベルト・モーツァルトの時代のフォルテピアノ。ハンマーによる打弦で音を出す、現在のピアノの前身。

■ピアノの音が出る仕組み

ピアノは鍵盤楽器であり、弦を叩くことで音を出す「打弦楽器(打鍵楽器)」です。
蓋(屋根)を開くと弦が張ってあるところまではチェンバロと共通ですが、ピアノの打弦機構はより複雑かつ強靭な機構で、湿気による音程への影響は少ないです。

レッスンルームでは、ベーゼンドルファー(Bösendorfer)のピアノを使用しています。

ベーゼンドルファーで印象的なのが、蓋(屋根)を開けた際に見えるフレーム。円が並ぶのが特徴です。

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